同郷だという花梨さん。
多分、母さんと同年代だから。
本当に近くで、花梨さんの苦悩を見てきたのかもしれない。
村の女戦士と崇められ、
国の仕事に引き抜かれて…。
四彩華の平和の為に、自分の生活を犠牲にする花梨さんを見てきたのかもしれない。
母さんは、
国に「申請しなかった」。
私の存在を。
私の「存在自体」を…。
「……それって…」
「…村人たちは、嬢ちゃんが『美々さんの娘』だと、勿論分かってる。美人な顔も似てるしな?…あの村を出ない限りは、ひっそりと暮らしている限りは…、誰にも分からないが…『書類』となると…」
太磨の表情が、曇った。
何時になく、曇った。
「…落ち着いて聞いてくれ。……嬢ちゃんには、籍が無い。」
血の気が引いた。
多分…、
今まで生きてきた中で1番。
何も考えられなくなった。
頭が真っ白になった。
「……国籍?が、無い…?」
太磨の言葉を口に出して、
必死に追い掛けた。
「……私の国籍が、無い…ですって…?」
「…あぁ、そうだ」
妖術師だという事を隠した。
更には、
「私」という…
「存在自体」を隠した。
そんな子供が、
何処に居ると言うの。

