普通はそれを目指して進むらしいけど、お忍びで旅をしている私たちには危険だから近付くなって言うの。
石柱の周辺には村も多い。
勿論、通行人も多いから目に付くって…。
まぁ、
お忍びの自覚が無い私たちは、あんまり危機感を持ってはいないんだけどね。
「…石柱ねぇ…。今んとこ、そんな目に付く岩なんて出て来てねぇけど…」
そうなのよ。
進んでも進んでも、
本当に進んでいるのかすら疑問な位よ。
辛うじて、赤茶色の例の山で方向を知れる位?
心弾む楽しい風景には何にも出逢わない。
虎白が寝ちゃうのにも納得よ。
『――いいから!!石柱が遠目に見えたら避けてねっ!!登録されてない妖術師の存在自体がバレたら、大変な事よ!?』
「…はいはい」
『――もっと危機感を持ちなさいよ!!この鼻ったれ!!』
花梨さんは鏡越しでも、変わらぬ剣幕で怒っていたわ。
直接手を下されない事を考えれば、太磨も幾らか気が楽みたいで返答が雑。
「……登録されてない妖術師、ねぇ…?」
すなわち、私。
ボソッと呟いた私に、太磨は一瞬こちらを目配りしたけれど、『聞いてんの!?』という花梨さんの剣幕に、鏡面に慌てて視線を戻した。

