記憶 ―流星の刻印―



『不器用な男だね、もっと上手く立ち回れなかったのかい…って言ってたわね。あと「馬鹿だね」って!!』

花梨さんは、ババ様の低い威圧感のある声色を真似て出していた。
太磨が額に手を当てた。


「……あ~…村に帰ったら…」

『うん、お仕置きねぇ?可哀相ね、太磨ちゃん。』

私からは花梨さんの表情までは見えないけれど、楽しそうである事は分かった。

ふっ…と意地悪い笑みをこぼすと、私は視界を上げた。



吹き抜ける風は、
優しく湿った草原の地とは、まるで別物の様で。
乾燥した風を受けた私の頬は、ヒリヒリと痛んでいた。

澄み渡る朱色の空。
これは双方どちらも変わらないのに、その下に広がる風景は相反する様にまるで違う。


私が知っていたのは、
「朱色の空の下に広がる、深緑色の世界」だ。

ここ…砂丘の地は、
「朱色の空の下に何処までも広がる、黄色い世界」だった。



『――いい?何度も言うけど、石柱は避けて通るのよっ!?絶対よ!?』

「…あぁ、はいはい」

花梨さんの言う「石柱」。
それは砂ばかりの砂丘の地において、方角を知る為の道標の様な物らしい。

中心部の街を囲む様に、
広い砂丘にぽつりぽつりと円状に分布しているとか。