連絡は毎日、同じ夕暮れ時に。
「私たちから」する事になっていた。
『どうゆう状況か分からないから、私から呼び掛けてマズイ場面だったら困るでしょっ!?』
という事らしい。
何が起こるというのか。
マズイ場面というのが、起こらない事を切に願った。
ラクダを止めた太磨は砂に足を付けると、渋々に荷物を漁り手鏡を持つ。
1つ深い溜め息を漏らすと、
「……最もお美しい、…気高き龍の戦士、花梨様…」
と鏡に向けて、呟いた。
それが、
彼女と繋がる「合い言葉」。
決めたのは誰か?
分かるでしょ?
…勿論、花梨さん本人よ。
太磨が連絡役を嫌がるのは、
第一に、この台詞を言うのが嫌なのよ。
私は別に何とも思わないけど。
でも花梨さんはきっと、わざわざ太磨にこの台詞を言わせたいのよ。
苛めて楽しんでいる訳よ。
…彼女らしいわね。
『…はいは~い!!花梨様よ!!』
聞こえてきたのは、
ああ呼ばれて嬉しそうな、
花梨さんの明るい声。
それを受けた太磨の、
本当に不服そうな表情に、
「…ぶぶっ…」
と思わず吹き出す私。
私に対しての偉そうな態度からは想像も出来なかった、新たな一面。

