結局、虎白は私の腕の中を選んで戻って来た。
それは正しい選択だったわ。


「…嬢ちゃん、騙されてるぞ?花梨は俺より年上だからな?自分の妖術で、無駄に若作りしてるだけだから…。」

……えぇっ?
さっきの太磨の驚いた表情は、それに対してだったのかしら。


「…太磨ちゃん、言っちゃ駄目じゃないっ!!折角嬉しかったのにっ!!」

――バシッ!!!と、
見るからに痛そうな平手打ちが太磨の腕に炸裂して、太磨の表情が険しくなった。

パワフルな人だわ。
色々気を付けろって、こうゆう事だったのね…。


「……揚羽ちゃん?…あれ?何か、誰かに似てるのよ…」

花梨さんは座る私の顔を、
結構な長い時間、上からジーッと見下ろしていた。

どんどん迫ってくる威圧的な表情に、私は愛想笑いも忘れて身を引いたわ。
「とって食われそう」とはこの事だわ。

妖術で年齢を偽っているというその肌は、しっかりと張りがあって、目尻にはシワ1つも見当たらない。
太磨はあったわ。


「……その嬢ちゃんは、美々さんの娘だよ。」

太磨が諦めた様にそう口にした瞬間、花梨さんの瞳は大きく見開いた。