「もう。久し振りなのに、相変わらずな態度ね?太磨ちゃんたら。」

太磨を離した花梨さんは、
ふと私に目を向けると、

「あら、こんにちは」

と笑顔を向けてくれた。

ちょっと緊張が解けたわ。
虎白同様、目の前で起きている光景が強烈過ぎて、私も固まっていたから。


「ここの所長の花梨よ。宜しくね?まぁ座って?」

「…初めてまして、揚羽と申します。所長さんていうから、もっと年配の方かと…。花梨さん、お若いのに凄いですね?」

私の挨拶に、
太磨の表情が驚いていた。

あのね、私も大人だから。
更には村での私の職業は「踊り子」だし、接客業だから。
全く、どれだけ世間知らずと思われている訳?


「……太磨ちゃん。何、この子…!!――良い子っ!!抱き締めてもいい!?」

「――…えっ!?」

花梨さんの言葉に、
椅子に腰掛けようとしていた私は、思わず後退った。
腕に居た虎白は、迷わず私を置いて逃げ出した。


「……止めてやれ。お前の筋力は半端ないから。嬢ちゃんの骨、確実に折れる…」

太磨が止めてくれたけれど、
その言葉の内容には引きつった笑いしか出なかったわ。

虎白は小さな頭で、太磨と私のどちらの元が安全か考えたみたい。