「…うるせぇな、騒ぐな。折角の見えないお洒落がバレるだろうが。」

――って言ったってね!!

口元にある太磨の指先に噛み付いてやろうと、私が口を開けた時よ。
太磨の膝の上の白い毛皮が、ムクムクと動き出した。


『…んもぉ、揚羽。僕の安眠妨害だってば。』

「あら、起きたの?虎白。太磨のお膝は気持ち良かった?」

『――うん、そりゃあもう。』

嫌みが通じない虎白は、無邪気に大きく伸びをして、無防備にお腹を見せた。

そのフサフサのお腹の毛を、
太磨は優しく撫でている。
フサフサ、私も狙ってたのに。


「…ふぁあぁ、じゃあ動くか。虎白坊ちゃんも起きた事ですし。虎白、下りろ?」

太磨は大きな欠伸を1つすると、虎白を追い立てて自分も立ち上がった。


「……は?」

「は?じゃねぇよ。もう暇で仕方ねぇんだろうが。そろそろ休息も十分だろ?」

そりゃ、まぁ。
だからって、何する訳?

私が首をひねっている内に、
太磨は受付の係員の前までスタスタと歩いていく。
そして…、


「…悪いが、兄ちゃん。至急ここの所長を呼んでくんねぇか?『太磨が来た』と言えば、向こうから血相変えて駆け付けるだろうがな?」

と言った。