「――そうじゃなくて!仮にも私は年頃の女性な訳よっ!?」

部下とか立場とかじゃなくて、つい昨日会ったばかりの男女が狭い密室に一緒に寝るなんて、有り得ないわ。


「……あぁ、それなら心配無用。期待に応えられなくて悪いが、俺は理性のある大人だ…。」

こっちを見ようともせず、寝たまま手のひらだけをヒラヒラさせる太磨。

カチンときたわ。


「――私だって大人よっ!!子供扱いしないでって……」

そこで私の言葉は止まった。
ガバッと急に太磨が身を起こしたから。


「……何よ」

「……10も離れてる小娘相手に欲情なんてしやしないが…。子守りついでに添い寝位ならしてやっても良い、我が姫…?」

太磨は穏やかに、
ニヤッと意地悪く笑ったわ。


「……ほら、来るか?」

「――…は?」

太磨の手が伸びてくる。

狭いテント、
逃げられない距離。

年季の入った、
蓮とも違うゴツゴツした手。


「――…ちょっとっ!!?」

近付く整った表情は、
穏やかで柔らかく、

目尻には、
これまで沢山の物を見てきた証である、細かなシワ。

それは太磨が笑う度に、
一層に深くなった。