記憶 ―流星の刻印―



「…人の肩に乗る獣は…初めて見たね。虎の足の怪我は、歩けない程に未だ痛むのかい?」

それじゃあ道中に都合が悪いだろうと、「どれ?」とババ様は私の方へ歩み寄った。
虎白の格好ばかりの白い包帯に手を掛ける。

にゃぁあ!
そう鳴いて、虎白は反対側の私の肩へ逃げ出した。


「……嫌、だって。」

…どうでもいいから下りてよ。


「怪我は大分良いのよ。そうゆう理由じゃないの…。ただのヘタレな理由よ…。」

呆れ顔の私を見て、ババ様も理由は悟ったみたい。
それ以上何も言わなかったわ。


「…じゃあ、丁度良い物を持ってきたようだね。そこの布を開けてみな。」

「……何?」

少し離れた地べたに置いてある布に、何かが包まれていた。

手の空いていない私に代わって、気の利く美玲さんが包みを開けてくれた。


「……また、ふる…」

あ、と言葉を飲み込んだわ。

布から出てきたのは、
何かの動物の皮で作っただろう「肩当て」で、確実にお古だと分かる位に古ぼけて茶色く変色していた。


「……何だい?」

「いいえ。ババ様がくれる物は、年季が入った物ばかりだなぁ…と思っただけよ。」

ふふ?と愛想笑い。
「さすが年寄り」とは言えないわ。