記憶 ―流星の刻印―



「…私なりに必要そうな物をまとめてみたの。揚羽ちゃんたら荷物少ないんだもの…。持って行って?」

そう彼女が差し出した布袋を、私は笑顔で受け取った。

本格的に村の外に出るのが初めての私は、旅に何を持ってけば良いのやら分からずで、自分でまとめた荷物は結局少なくなってしまった。


「――有り難う、美玲さん!!」

何て気の利くお姉様。
その横には、浮かない顔でそっぽを向いている蓮お兄様。

未だ怒ってるの…

結局「駄目だ!」の一点張りな蓮との話し合いは平行線で、私が押し切る形で家を出た。

過保護よねー…。
心配してくれるのは有り難いけど、私だってもう良い大人なんだから…。

そう呆れ顔で蓮に視線を送っていると、後ろから威圧感のある掠れた声がした。


「…何なんだい、その虎は…」

「――ババ様!」

ババ様は私の肩にベタリと乗る虎白を目にして、呆れた声を出していた。

虎白は相変わらずビクビクと、ババ様から隠れる様に私の首元に力を入れる。


「……痛いってば!爪!」

重いのは百歩譲って諦めたとしても、せめて爪は立てないで欲しいわ。
乙女の肌は繊細なのよ!?