記憶 ―流星の刻印―



「大丈夫よ?何度も言うけど、ヘタレなの。皆にこのヘタレっぷりが伝わらないのが残念だわ?」

そう言う私の膝の上で、
虎白は私を見上げて「にゃあにゃあ」と鳴き続けていた。


『ねぇ、ヘタレって何?ねぇ、ねぇ?揚羽ってば~』

「――もぅ、ウルサいわねっ!!ウルサイと…こうよっ!?」

私は虎白の鼻先から口を摘む。
虎白はフンフン言いながら私の手から逃れようと体をよじっていたわ。

牙だって小さいし、
虎白の口を押さえるのに、私の片手1つで足りるもの。


「じゃあ、明日にでも…。すぐに発つわよ?さぁ、虎白。この首輪を付けてね?」

私が首輪を手に持つと、
虎白はビクリと首輪から身体を離した。


『……それ、痛くない?』

さっきの耳飾りがトラウマになったみたい。
「痛くないわよ」と繰り返す私と、『本当?本当に?』と疑い続ける虎白。


「…しつこいわねっ!!痛いのが良いなら、締め付けるわよ!?」

『――嫌だよ~っ!!優しくしてよ~っ!!』

騒がしい私たちに、呆れた様に目を細めるババ様の手元からは、湯気のたつ優しい茶葉の香りが漂っていた。