記憶 ―流星の刻印―



心配性の蓮が、テーブルに両手をついて席から立ち上がった。

私とババ様は必死に止める蓮に構わず、話を進めたわ。


「…虎白を連れて歩くとなると、国に申請が必要になるの?秘密じゃマズいかしら。」

「…あぁ、揚羽がそう言い出す事は予想していたからね。事前に申請しておいたよ。」

「……は?」

何を言ってるのかしら。

首を傾げる私を見て、
ババ様はヒャヒャと笑った。


「あたしの名で申請しておいたよ。お前がその虎の子を連れて村を出る事は分かってた。」

「…だって、さっきは…」

商人の馬車に乗せるって…
ヒドいわ。
まんまとババ様の思惑通りに進められただけじゃない。

コトリと虎白につける首輪を置いて、ババ様はニヤリと笑っていたわ。


「……準備万全じゃない。」

何だか悔しくて、
引きつった笑顔しか出なかったわ。


「…まぁね。しかし揚羽。この首輪は妖術が使えないお前にとっては、ただの飾りでしかないからね。」

「分かってるわ?」

虎白を連れて歩く旅。
「契約の首輪がついてるから、あの虎は安全だ」と周囲の人たちを安心させる為だけの見せかけ。


「まぁ…大人しそうな虎だから、大丈夫だと思うが…」