記憶 ―流星の刻印―



…かと言って、
ババ様にああ言われた以上、蓮も美玲さんも強くは味方にはなってくれそうもない。
説得するのは無理そうね…。

膝の上の虎白。
まだ幼いフワフワの白い毛並みを、私はぎゅっと抱き締めた。


「――ババ様、この村で虎白を飼う事は諦めるわ。でもね、渓谷の地には私が行くわよ。」

「「――…はっ!?」」

ババ様は黙っていたけど、 代わりに私の保護者たちが黙ってはいなかった。


「…ちょ…ちょっと、ちょっと、揚羽!?何言ってんだよ…」

「――揚羽ちゃん!」

慌てふためく2人の顔。
いつもの私のワガママに慣れた2人にとっても、今回だけは事が事。


「ほら、だって虎白が心配だし。それに私も一度は草原の地を出てみたかったし…、私は揚羽よ?自由に旅をするには丁度良いじゃない?」

そうよ。
私にこの村は狭すぎる。

平和なのは良い事だけど、毎日毎日シャンシャンと鈴の音をたてて踊っては賞賛を浴びるだけ。
特に何もない。

虎白と出会ったのは、
私にとっての転機なのよ。


「…まぁ…揚羽が行くと言うのなら、金がかからなくて良いけどね?」

「――そんなっ!ババ様まで何を言うんですか!」