記憶 ―流星の刻印―



ババ様は「この私が見抜けないなんてね…」とか何とかブツブツ言っていたけど…


「…ふぅん?」

ババ様に食い入る様に見られてガチガチに緊張していた虎白が、私に頭を撫でられて気持ち良さそうに目を細めた。

何だか難しい話になってきたし、私は途中でどうでも良くなっちゃったわ。


「…でも害ないわよね?この子。私が飼ってもいいでしょ?ババ様。」

「そりゃ無理な相談だね。」

「――何でよっ!!」

殺さないって言われたから、
当然飼って良いものだと安心していたのに。


「殺しゃしないよ。しかしね、虎の子は渓谷の地に帰すよ。」

「えぇ~…」

「丁度…明日にでも渓谷方面に行く商人の馬車が、この村に泊まっているからね。虎の檻を荷物に乗っけて貰う様に、金で頼むさ。」

不服で唇を尖らせる私を、
虎白も不安そうに見上げてる。

私にせっかく懐いたのに。


「…虎白。虎白は、広い渓谷の地のどこから来たのかも覚えてないのよねぇ?」

『うん、わかんない』

ほら、心配だわ…。

渓谷の地に着いた途端、檻から出されて野生に放たれて…、
この臆病者が暮らしていけるのかしら。

――無理ねっ。