『…揚羽ぁ、ヘタレって?』

虎白の質問を無視した私の、鼻で笑う様な小さな溜め息とは対照的に、ババ様は長い深い溜め息を1つ漏らした。


「…形跡がな、読めないんだよ。その虎の子は…」

「形跡って?」

私たち3人と1匹は、揃いも揃って全員で首を傾げていた。


「…例えばな、この村に旅人が来るとしよう?その者の纏った気を見ればな、意識には関係なく、どの方向からどの様な旅をして来たか…、分かるんだよ…。だから、嘘を言えば分かるしな、良からぬ事を企てる奴は村から追い出すね…」

「…あら、そうなの?ババ様って、実は凄いのねぇ?」

…ふぅん?

只の気難しいババ様じゃなくて、ちゃんと村長らしい…龍の巫女らしい仕事もしていたのね。


私の率直な感想に、蓮と美玲さんは瞳を大きくして、ババ様が怒りゃしないかハラハラしていたわ。

でもババ様は怒らなかったし、そのまま話を続けた。

多分、私に悪気がない事が分かってるのよ。
気が読めるって言ってたし。


「…旅人の中には、道中の防犯用に獣を飼い慣らしている者も居る。それに連れられて、主とはぐれたか…と思ったが…、違うようだ。虎から主の気配が感じ取れないからね。」