「……へぇ?そうなの?」

「――違うよ!そんな子供じみた事を僕が気にする訳がないじゃないかっ。」

「……ふーん?寂しいんだ?『蓮兄ちゃん』は?虎白、だっこしますかぁ~?」

「――しないよ!馬鹿!」


笑いが漏れる食卓。

決して裕福ではないけれど、
母さんが残してくれた家と、
温かな2人と、
新しい小さな家族1匹。

あら、
何だか幸せなんじゃない?



「…ねぇ、揚羽。これは真剣な話なんだけど、ババ様には本当の事を話しておいた方が良くない?」

「――ババ様に!?」

真剣な表情でコクリと頷く蓮。

ババ様と私たちが呼ぶのは、この村の長である老婆。
とても厳しい人…。

いつもニコニコしている美玲さんですら、ババ様の名前が出た瞬間から真顔になったもの。


「ダメ!一番言っちゃいけない人じゃないの!」

殺されちゃうわよ、虎白が!
嫌よ、そんなのは!


「…何かあってからじゃ遅いし、それにババ様は…もう知っているかもしれない…。」

「…知っているって…まさか蓮!裏切って話したの!?」

私の眉間にしわが寄る。
母さんのお気に入りだった赤い模様の入った白い陶器の皿が、テーブルの上でガチャンと音を立てた。