変化に気が付いたのは、
丸1日歩き通しで日が暮れてきた頃だった。
もうお互いに軽口を叩ける余裕もなくて、ただ足元のゴロゴロとした赤土をひたすらに見ていた。
ふと…、
気付いたの。
「……ババ様が居ない…」
傾斜はあるけれど、
大きな岩陰でもない限りは見通しの良い風景。
距離はあっても、
先を行くババ様の背中は見えていたはずだった。
その背中が、
いつの間にか消えていたの。
「…太磨、ババ様は?居なくなっちゃったわよ…?」
私は立ち止まると、流れ落ちる程の額の汗を拭いながら、斜面の上を仰ぎ見た。
「……あぁ」
「…あぁ…って…」
冷静な余裕な表情に見えても、やっぱり疲れているのかしら?
太磨は焦りもせずに、
一声あげただけ。
周囲を見回すと、
太磨の指先は、ある1点の場所を差した。
「……そこ」

