「太磨さんは知っているはずですよ、僕が見ていた事っ。僕…とは分からないかな?朱雀が…空を飛んでいたはずですよっ…。眠る揚羽さんの上空でっ…」

朱雀が…?

前を歩いていた太磨が、
ふと足を止めて、
こちらを振り返っていた。


「……あぁ、飛んでたな?」

あ、聞こえてたのね。
さすが余裕のある方は、周りの会話まで耳に入れて登山しているみたいよ?


「…朱雀の刻印は、僕の瞳にあるっ…。はぁ…、蓮さんがお2人を探しに出た時にっ…僕も朱雀を使ってっ…」

「……分かったから、もう喋んないでいいわよ…」

自業自得ね。
朱理は、ついに立ち止まった。


砂丘の地で…、
初めて私たちが朱雀を見た時の事を思い出したわ。

お馬鹿な王子様の居た石柱。
その上空で消えた朱雀。

朱雀が石柱に居たと王子様に言うと、彼の態度は一変した。
朱理は後から言っていたわ。
丁度、捜索していた最中だったと…。

同じだった訳。
朱雀は、
『朱理の目』になれるんだわ。


「…ふぅん。便利ね?」
「…便利だな」

私と太磨の言葉。
絶句し、敗北したのは朱理の方だったわ。


「……それだけっ?」

「はぁ…。あとは何?」