私たちは少し歩き出しながら、
蓮から出る次の言葉を、首を傾げて待っていた。


「…そうそう。早く帰らなきゃいけないよ。朝起きるなり、虎白が騒いで鳴き止まないんだって。」

「――…虎白が?」

私たちは驚いたわ。
人見知りのヘタレの虎白よ?
私たち2人には慣れたけれど。

大人しく部屋の隅っこでビクビクしている姿しか思い付かないのに。


「…どうして?何かあった?何を鳴いてるの?」

朱理にでも苛められたか。
ババ様の威圧感に、恐ろしくて泣いているのか…。


「…そりゃ分からないよ、僕たちには。困った事に、虎白の言葉が分かる2人がここに揃って居るんだから。」

「「……あぁ、そうか」」

そうだったわ。
2人してババ様に貰った耳飾りを横目に見る。

旅に慣れつつあった私たちには当たり前の様な事だったけれど、虎白の言葉は他の人には分からないんだったわ。


「大人しい虎だと思ってたのに、やっぱり虎は虎なんだよ。とりあえず少しは慣れてる美玲を置いて来たけど…、大丈夫かな…。契約の首輪だって、していても意味が無い物だし…。暴れられたりしたら…手に負えないよ…」

蓮はブツブツと、曇った表情でそう心配していた。