「…馬鹿ね?太磨はただの『良いオジサン』よ…?」

「…ふん、…ただの子守だ」

昨夜の会話の続きの様で、
私たちは目を細めて「ふふん」と笑っていた。


「……ふぅ~ん?そぉ~…」

どうやら疑ったままの、
明らかに不機嫌な、
蓮の気のない返事。

相変わらずの蓮の態度に、
私は安堵を隠して口を開く。


「……戻るつもりが眠ってしまったの…。それだけよ?」

「ふぅん。まぁ、思ったより元気で良かったよ。何かあるといつもこの湖畔で独りで泣くからね、揚羽は。」

心配してくれたの…。
きっと私が居ないと知って、直ぐにここに駆け付けてくれたのね…?


「…どうやら独りではなかったみたいだけどっ…」

蓮はそうブツブツ呟いて、目を細めて太磨を睨んでいた。


「…おぉ、こわっ…」

太磨は蓮の瞳から逃げる様に地面から立ち上がると、腰や足をひねっていた。

少し表情を歪ませた事に私は気が付くと、


「…ごめんね、太磨…。体勢、辛かったんでしょう…?」

そう私が気遣ったものだから、蓮はますます苛々した表情を見せていた。


「――ほら、揚羽!!皆が心配してるから戻るよっ!?……あ、そうだ…」

急に蓮の表情が変わる。