「――…ちゃん…嬢ちゃん…」

…あぁ、
ほら、夢だったの。
太磨が私を呼んでいるわ。


「…起きろ…。…おい、泣くなよ…。状況が悪化する…」

「……夢が、悲しいの」

未だはっきりとしない頭で、私は周囲の明るさに瞳を擦る。

ここは、太磨の膝枕。

あぁ…
あのまま眠って朝を迎えてしまったみたい。

ん?状況が悪化…?


「――…悲しい?悲しいのは、僕だよ。」

「……?」

知っている声。
太磨とは違う男の人。


「……怖いお兄様が来てるぞ」

太磨は、私にそう言った。
怖いお兄様…?


「……蓮っ?」

膝枕から頭を上げ、
振り返ると…

怒った蓮がそこに立っていた。


「…まぁしかし…、しばらくの内に仲良くなったもんだねぇ?膝枕?皆が心配してるっていうのに、…膝枕?」

「……蓮…」

しばらく振りに会った蓮。
相変わらずの…
やっぱり予想通りの…


「……ほら」

そう私が太磨に言った台詞は、昨夜の続きだわ。

ヤキモチ焼き。

太磨は呆れた様に口を開いて、無言で頷いていた。


「……悲しいのは、僕。娘を嫁に出した父親の気持ちを、今…味わっている様だよ…。膝枕って…」

こだわるわね…
膝枕に…