「――待って、待って…。破ったって…」

私は、焦ったわ。
朱理と私を、交互に指差した。

朱理を龍湖の里に連れて行くと花梨さんが言い出した時に、太磨が渋い顔をしていた事を思い出した。

『龍の巫女様が許すか…』

『8年前とは状況が違うの』

その2人の会話の事。


「…あぁ、表向きは今も禁じられているがね、今回は仕方ないんだよ…」

ババ様は力無く笑ったわ。

それから、
「続きを聞いとくれ」と、
再び話を始めた。


規則を破った彼は、
自ら他の四獣の元を回り、自分の策に協力を求めていた。

初めに渓谷の地へ。
次に、砂丘の地へ…。

それが8年前の事。

そして、この草原の地、
龍湖の里へやって来た彼に、母さんは殺された。


「……協力って…。それを断ったから、母さんは殺されたって事なの…?」

「…あぁ」

「――っ!!そんなっ!!じゃあ、砂丘の先代の王が8年前に亡くなったのもっ!?」

私は朱理を見たわ。
朱理は、涼しい顔で小刻みに頷いていた。


「…まともな人間なら、全員断るだろう内容でしたからねぇ?流石の僕も、協力出来ませんねぇ…」