「……まさか…何故…」

太磨が…、
床の肩当てと、私の顔を…
何度も何度も交互に見ていた。


「……太磨…」
「……嬢ちゃん!?」

止まらない鳥肌。
熱い…、
熱い『左肩』…

私は、
それを右手で抑えて…、

怖くて怖くて、
普段のすました表情を崩して、

……泣いていた。


「…太磨…、た…助けて…」

「――揚羽っ!!」


血相を変えた太磨が、

…初めて、
私の「名前」を、呼んだ。


…気付いていた。

初めて、
遠くの空を飛ぶ朱い朱雀を、
見た時から。

朱理の瞳に怯えた時も…。

その『存在』が、
まるで『表』に出たがっている様に感じていた…。

でも…
怖くて、認めたくはなかった。



「――…助けて!!…私の中に、…『何か』が居る…!!!」

「――揚羽っ!!落ち着け…」


落ち着け…!?
落ち着いていないのは、
私の中の『何か』…

グルグル、
グルグルと…

私の身体の内部を、
まるで移動している様な…


抑えきれない熱い左肩から、
震える私が、手を離す。


…私は…
『何か』を、背に纏った…

背後に、
何かを…感じてた…



「「――…龍神…!!!」」


2人は確かに…
そう言ったんだ…