朱雀はまるで朱理の様に、
炎に見え隠れする瞳を細め、
やはり、私を見ていた…。

私を…
見ている…?

――…違う…。

不思議と、そう感じた。


「…私の『刻印』は、この瞳に…。揚羽さん、貴女の刻印は…、貴女が先程から庇う『左肩』にあるはずです…」

静かに何度も、
私は首を左右に動かした。

違う…。
違うわ、これは…
ただの古傷で…。

その傷を隠す肩当てには、
ババ様特製の、古傷を癒やす薬が仕込んであって…

……だって…
この傷は、いつから在ったかも分からない位に…、何の意識もしていなくて…


「……太磨…?太磨…」

…この人は、
何を言ってるの…?

不安になる私が頼るのは、
太磨だけ…。

安心する太磨の体温を求め、
私は押さえていた両肩から手を外し、弱々しく太磨に腕を伸ばした。


――…パタッと、
何かが床に落ちた音がした。

ふと見ると…、
床には、
私に在ったはずの『肩当て』…

外れた…

…外れたのよ。
ババ様の妖術が無いと、
「村に帰らないと外れない」と、そう言っていたじゃないの…

どうしてなの…
…どうしてなのよ?