あまりの太磨の真剣な表情に、私はこの国の事でも聞くのかと思ったの。


「…朱い鳥、見なかったか?」

……太磨~…

私は呆れて目を閉じた。
もうお願いだから、忘れて頂戴よ…。


「…何故そう聞く?」

「いやぁ、この石柱の上空で消えたもんでね…?」

「…そうか。じゃあ、貴様ら不運だったな…!!!今に見ていろっ!!」

「……は?」

不運なの?
見れたら幸運じゃないの?

そう私たちが首を傾げて間もなく、ザッザッと静かな砂丘に大勢の人の気配がした。


「…ふ、はははははっ!!」

王子様は水を得た魚の様に、
活き活きと…
急に大声で笑い始めた。

意地の悪い目つき。
横柄さが更に増していた。


ザッザッと…
砂を踏みしめる沢山の足音が次第に大きくなり、それはこの石柱に向かってきているのだと分かる。

「何事だ?」と辺りを見回している内に、私たちは沢山の武装した兵士に囲まれていた。


「…兄上、お迎えにあがりました。…お怪我は?」

兵士たちから一歩前に出た男が、表情も無く淡々と、事務的にそう話した。


「――朱理!!遅いぞ!!待ちくたびれたぞ!?もっと早く来い!!」

「…申し訳ありません」