記憶 ―流星の刻印―



太磨以上に偉そうな男が、
そこには居た。


「――いいから!!黙って水と食料をよこせ!!俺を誰だと思ってる!!」

「……知らないわよ」

ここは、
私たちが避けて通るはずの「石柱」の下。


朱い鳥を追って黄色の砂丘を幾つも越え、肉眼で確認出来た初めての石柱。

花梨さんの言い付けを守る様にと、呆れて止める私の言葉を振り切って、ラクダは石柱へと近付いた。


朱い鳥は、
丁度この石柱の上空で、
すぅっと朱い空に溶け込んで、
消えたのだ。

興奮した大人と虎を、
止める事は出来なかったの。

そして、今。


「――俺様を知らないとは、呆れるなぁ!!まぁ、許してやるから、よこせ!!」

きょとん、
と私たちは横暴な言葉を並べて怒鳴る男を見ていた。
ラクダに乗ったまま、男を見下ろしていた。

食料と水を要求する男。

これが噂の盗賊かしら?
いやいや、
それにしちゃ身なりが小綺麗で、一切の武器を持たない丸腰。


「……分けてあげなくもないけど、貴方それが初対面の人に物を頼む態度なの?」

「あぁ!?お前こそ何様だ!!上から俺を見下ろして、この俺に意見するなんて!!」

――はぁっ!?
――何なの、コイツ!!