「…見かけ通りだ。とても弱くて…とてももろい。一人で立ってることなんかできない」
「え……」
…俺が聞いたのは…。
俺が、親父さんから聞いたのは…、真裕は生まれたての子鹿のように危うく見えて、とても芯が強く、本当は誰の手も必要としていない…と。
そう聞いた気がするんだが…。
一瞬だけ親父さんと楓を見比べて、再び口を開いた楓に意識を向けた。
「お義母(まこと)さんを亡くしてから真裕は、毎晩震えながら俺にしがみついて泣いていた」
「…!」
「自分でもなにがとは分からないけど怖い…と」
「……」
相変わらず楓の意識は真裕にあるわけだが、親父さんは目を見開いて楓を凝視した。
「それでなくてもしょっちゅうそんなことはあった。少しでも精神が不安定になると、夜必ずそうして泣く。…本当は、誰かに支えてもらっていないと立ってもられないんだよ」
そう言った楓がなぜだか…一番つらそうで。
お前こそ…誰かが…真裕が、そばにいないとダメなんじゃないかと。
そう言いたくなった。
「…悪かった…」
聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声でそう呟いた楓。
それは、そばにいてやれなかった真裕へ向けられたものだった。
『あたし達…マヒロを傷つけたわ』
『…!』
『だって、勝手にこの子は強いって決めつけて…。それがきっと、マヒロの負担になってた…!』
『ハディ…』
『なんであんなに気を遣ってばかりなんだろうって思ってた。でもそれ…あたし達のせいだったのね…』

