「はっ。お前でもんな顔するんだな」


「うるせぇなほんとに…」


こいつら、やってなかったらやってないでからかうわ、やったらやったでからかうわ…。

そんなことしか考えて生きてねぇのかよ…。


うんざりしてため息をつき、起こしたベッドに背中を預けた。


「…なあ、お前が真裕のことを一番よく知ってるのによ、お前だけは一生知ることがない真裕を、俺達は知ってんだよ」


「は? なんだ急に」


黙っていたかと思えば、唐突に真面目な顔して喋り出したシュン。


「お前がいないときの真裕さ。どんなだったと思う?」


「……」


「……あんな笑顔は見られねェし、計算かと思うほどの天然も影を潜める。…声も出さずに泣くんだよ。それに、声がとても冷たかった」


「声…?」


「おうよ。声は冷てェし、目は死んでるし、言葉も鋭かった」


真逆だな…。

俺の真裕は、底抜けに幸せそうな声で幸せそうに笑い、キラキラ輝いてて愛情に満ちた目をしている。

…まあ、時々言うことは鋭いがな。


「とにかく見てらんねェのよ。すべてが抜け落ちたような…なにもかもを失ったような。そんな風情さ…」


見てられない…か。

見てられないほどのあいつを…俺は一度だけ見た。


母親が亡くなった時だ。


あの瞬間の真裕は今にも壊れそうで、消えてしまいそうだった。

苦しみが…痛みが…つらさすべてがこちらにも流れ込んできて。

どうしたら楽にしてやれるんだろうと考えると、こちらも涙が出そうだった。