サッと青ざめたあたしが分かったのか、先生は慌てたように続けた。


『あ、い、いえ。一応落ち着いてはいます。今日明日にでも容態が変わるというようなことはないと思われます』


『でもそれって…よくもならないってことですよね』


『…! あ……まあ…』


二ヶ月の間……ずっと…?

ずっと、生死を彷徨い続けてたの?

一人で…。


……あたし…どうして…。

どうして、この人の一番大事な時にそばにいてあげられなかったんだろう…?


そう思うとつらくって、涙が止まらなくなった。


『奥様…』


あたし……愛してるのに。

この人を、誰より愛してるのに。

何で何もしてあげられないどころか…!


顔を伏せて泣き出したあたしの背中を、父様の手が撫でた。

それを見てか、先生は話を続けた。


『N病院のスタッフ達はすぐに、彼が星野楓さんだと…あ、いえ…藤峰様だと気が付きましたので、彼がそこにいることは極秘として治療を続けました』


極秘…。

だから…か。

でも父様すら見つけられなかったなんて、相当だな。


『しかしご親族は藤峰家の方々だと分かっているのにご連絡のしようがなく、かといって少しでも外部に漏らせば大変なことになります。それで…これほどまでに時間が…』


そうだよね…。

持ち物なんて吹っ飛んでるだろうし、意識がないんじゃどうしようもないか…。


『しかしどこから漏れたのか、ついにN病院の名が出てしまい。それで急遽、あそこの院長と知り合いである私のところへ来たわけです』