『初めはNYの…奥様とは別の病院に運び込まれました。しかしあのときはどこも人手不足で、あれほどの重症を診ることはできなかったそうです』


あれほどの重症…。

かっくん、そんなにひどかったの…?


無意識のうちにぎゅっと彼の手を握りしめながら聞き入った。


『言い方は悪いですが…俗に言うたらい回しというやつです。一度は受け入れ先が見つかったのですが、その病院の力で彼を救うことは恐らく不可能だった』


「…!」


『N病院は世界でも有数の、とても設備が整った、優秀な医者も多数いる病院です。あそこなら…という思いで、そこの医者はN病院に彼を連れて行ったわけです』


「ニューヨークから…?」


嘘でしょ…?


もう言葉も失って、先生とかっくんを交互に見比べた。

この人……ニューヨークからこんな遠くまでたらい回しにされちゃったの?


『もちろん各専門医が付き添い、万全を期しました。おかげで彼は、N病院で一命は取り留めたんですが…』


そこで先生は言葉を切った。

あたしはこの二ヶ月、こういう間を何度聞いてきただろうか。

おかげで、人が言葉を切ったこの瞬間が大嫌いになった。


『……しかし、やはり怪我の程度は著しく重く…それが限界でした』


『それ……って?』


『命を繋ぐことです。それが限界で、意識が戻る保証までは出来なかったそうです』


「!」


命を繋ぐのが精一杯…?


…あまりに信じられない言葉だった。


じゃあ今も…?

今も、いつ死んじゃうか分からないってこと…!?