楓に覆いかぶさるように抱きしめる真裕の足元には、昨日花梨が渡していたマグカップの破片が散らばっている。
なんでまたこういう状況に…?
そう思って首を傾げた、その瞬間だった。
―スッ…
「え…!?」
「なっ…」
「!?」
『…!!』
『…!?』
な…に…!?
「か……楓…?」
楓の母親が、震える声で漏らした。
無理はなかった。
なぜなら……今。
泣きじゃくる真裕の頭に、優しく乗せられた手がある。
『どうしまし…た……』
駆けこんできた医者も、言葉を止めた。
その場で口を開く者はいなくなり、真裕の号泣する声だけが響き続ける。
「うっ…うーうっ……!」
…俺達からは見えない。
真裕の陰に隠れて楓の姿は見えないけれど、あの手は確かに……確かに楓のものだ。
ということは…。
『ち、ちょっとどいてください!』
焦って俺達をかき分ける医者が中に入っていき、真裕のいる方とは反対側から覗き込み、驚愕の表情を浮かべた。
『なんてことだ……』

