「んん!? 行くの、行かないの、どうすんの!」


「わ…分かったから…落ち着け?」


「あ?」


「あじゃねぇよこら。…ほら」


雲行きが怪しくなってきたので、ちょうど足元に纏わりついて来ていた紅葉を、真裕の腕に抱かせてみた。


「…………どちたの紅葉たん❤お兄たん達相手にちてくれないの?❤寂ちいの?❤」


「……」


「……」


…マジでこえぇよ。子どもが産まれるのが。


「ハア……もういいや…」


「終わりでございますか? それではお部屋をご案内いたします」


「いたのかΣ」


諦めのため息を吐いたユウキに、ぬっと現れた坂本さんが言った。

ずっといたらしい。


「よちよちよち❤うーんいい子ねぇ❤」


「なにもしてないのにいい子って…」


「存在がいい子! …あんたと違って」


「今なんか言ったかよ」


「いいえなにも?」


あちこちにハートをまき散らしながら紅葉を抱きしめる真裕の姿からは、近い将来の姿が容易に想像できた。

簡単なことだ。

紅葉を人間の赤ん坊に置き換えればいい。


「……色々複雑」


言葉では言い表せないほどに…。