『おい、本当にここに住まわす気か!』


「ん?」


…と、思考がよくない方向に動き出したとき、それを食い止める声が外からした。

しかも何やら聞き覚えがある。


『なにを好き好んであんなバカップルの家に転がり込まなきゃならないんだよ』


「わたくしドイツ語は分かりませんゆえ」


「うそつけΣいいわじゃあ日本語で話すから。だから俺をここから出せって」


『わたくし日本語は分かりませんゆえ』


『さっき喋っただろ!Σいいわじゃあ英語で話すから』


「Je ne comprends pas anglais」
(わたくし英語は分かりませんゆえ)


『フランス語も少しなら分かるようになったんだよあいにく』


「…………お嬢様、楓様。ユウキ様がおいでにございます」


「無視かΣ」


坂本さんと漫才をかましながら結局部屋まであがってきたのは、やはりユウキで。


「ほんとにきた!」


あいつもものすごく不満そうで。


「来たくて来たわけじゃない…」


…ため息をこぼしながらそう呟いた。


「なんなんだよ、藤峰家当主…」


「やっぱり父様が強制的にねぇ…。……かわいそうに」


「他人事かΣあんたの親父だろ!」


「だってあたしにもどうにもできないしー…。ほら、父様って竜巻みたいじゃない? あたしと違って」


「そっくりだ」


「そっくりだ」