―コンコン


「はーい?」


『お話…よろしいですか?』


「あら。先生だわ。…なんて仰ってるの?」


「話があるって…」


ぞくりと背筋に寒気が走った。

その言葉も、声も、表情も。

すべてが嫌なものに思えたから。


『この一週間とても迷ったのですが…』


ママにも分かるようにとゆっくり話す先生。

耐えきれず、ぎゅっと強く手を握りしめた。


『やはり、他にどうしようもありません』


「……」


「……」


『藤峰様とはさきほどお話して参りました』


カツカツと歩み寄ってきながらそう言った先生に、少しの恐怖を感じた。


もう近寄らないでほしい。

なにも言わないでほしい。


逃げ出しそうになる足を抑えるので必死だった。


『ご主人ですが…』


そう言ってあたしを見ると。

あたしを絶望に突き落す一言を放った。






『もう、限界を感じています―』