ものすごく渋々承知した様子で、医者は引き上げた。

…そりゃあ、医師の立場からすればなんとしても患者の無茶は止めたいだろうしね。


「そういや、ここって他に患者おらんの?」


「今はいないよ。楓くんが来てからは、入院は断っているらしい。…本当に迷惑をかけているなここにも…」


目を細めたまおパパも、ずいぶんと疲れているようだった。

みんな…精神的な疲労はハンパないだろうな。


『でも…まあ。ひとまずカエデは生きてたんだ。一歩前進じゃね?』


『そうね。きっと、そのうちまた前進できるわよ!』


『気長にいこ、気長に』


『そうね…大丈夫よね…きっと…』


多少不安げではあったものの、ウィーン組はそう自分達に言い聞かせていた。

僕達もそう思いたい。

ここまできたら……楓のやつも、責任感じてちゃんと戻ってくるだろ。

あいつ、意外と律儀だからな。


「そうだわ。荷物とか…どこに置いとこう」


あ……そういえば。

空港から直接来たものだから、丸々持ってるんだっけ。


「ああ、あの先生が家においてくださるそうだから…もうしばらくここに置いているといい。今夜持って行こう」


「本当ですか!」


「ええセンセやなぁ…」


「いっそお人好しだね」


「お世話になる人間の態度じゃないΣ」


ありがたくは思ってるさ。失礼な。