突然鋭い声で言い放ったまおちゃん。

その圧倒感に思わずうなずいたような雰囲気の医者は、きょとんとして瞬きを繰り返す。


『今後一切私に命令しない。もっぺん言うけど触らない。…誰も! 誰も構わないで』


厳しく、こちらを振り向くこともなく言い放つと、まおちゃんはぴしゃんと強く音を立てて扉を閉めた。


『……』

『……』

『……』


…二度目の沈黙。

誰もが呆気にとられていた。


「…久しぶりじゃない…? あのまお…」


「そう…やんなぁ…」


『ふ……藤峰様のお怒りを買っ…!?』


『あ…ああ、すみません。あれはキレるとどうも手が付けられなく…』


もうあまりの恐れ多さに声すら失う医者を、まおパパが必死でなだめていた。

まあ確かに…藤峰家次期当主に本気でキレられると色々怖いよね。

さっき言ってた“世間から永久追放”、本当にされかねないし。


『ただ…放っておいてやっていただけませんかね? あれの体に悪いことは重々承知です。真裕自身もよく分かっているでしょう』


『でしたら…』


『しかし、それでも夫のそばにいたいんですよ娘は』


『…………分かりました。なにかあればすぐに呼んでください』


『申し訳ありません』


『しかし…』


『え?』


『……いえ。それでは』