――蓮二サイド――
「あっ! 帰ってきた!」
弾かれたように飛び起きた花梨。
その目線の先には、一見美男美女の理想カップルに見えて、ふたを開けてみれば開いた口が塞がらなくなるはちゃめちゃ藤峰夫婦の姿。
「ちょっとぉ! 結っっ局ほんとに囮にしてくれて!」
「まおたん楓に浸食されていきよるで!?」
「まおちゃんのもとの性格だと思う」
どちらかといえば、浸食されてきているのは楓のほう。
「ハア…」
「ん?」
「どした?」
花梨達の全身での抗議などまるでなかったかのように、まったく明後日の方向を向いてため息をこぼすまおちゃん。
二人はガラリと態度を変えて心配そうに覗き込んだ。
「いやね…もう頭が痛いですよ…」
「ええ? 大丈夫なの?」
「調子悪いんやったら寝とらんと…」
「違うわ。この人よ、この人が原因よ」
びしいっと隣の楓を指差す彼女の目は半ば恨めしげだ。
「どうしたの? なにかしたのこいつ」
「聞いてくれてありがとう蓮くん。こいつったらさっきけろりと自分まで退学を申し出ちゃってさもー。あっという間に正式に承諾されたわよ」
「……」
「……」
「……ん? 今なんて?」

