ますます強く抱きしめてくれるかっくんにしがみついた。


「いやだ…」


「…うん」


「いやだよー…!」


「…ん」


「バイオリンできなくなっちゃうなんて…っ、いやだぁ…!」


「…っ…」


…ずっと、目を逸らしてきたような気がする。


かっくんが死んでしまったという報せと。

バイオリンが出来ないという事実と。

かっくんがいないのに、彼の赤ちゃんはあたしの中で育っているということと。


あまりに一気に襲ってきて、すべてから目を逸らしていた。


だけど今…残されたのは、左手の再起不能という問題だけ。

向き合わざるを得なかった。


「うまくなくていいの…っ」


「ああ…」


「誰にも聞いてもらえなくたっていい…!」


「…っああ…」


「だけど好きなんだもん…やりたかった…!」


嗚咽を抑えて言葉を絞り出すと、かっくんはいちいち返事をしてくれた。

時折…声がつまってるような気がしたのは、気のせいかな…。



「…っう…っ、やりたかったの…っ!」



小さい頃から…物心つく前から、ずっと音楽と…バイオリンと、寄り添って育ってきたんだ。

それが失われるなんて…あたしには、到底想像もつかなかった。