「ではこれを…如月さん。 前に出てやってみて」 「はい」 あ、と思わず顔を上げた。 喋っている。動いている。 彼女も人間なのに、 なんとなくそれが新鮮に感じられた。 声は彼女のイメージ通り。 鈴が鳴るような、か細く可愛らしい声。 チョークを動かすたびに、彼女の サラサラの黒髪が揺れる。 そのなんだか堂々とした振る舞いに、 あたしは目が離せなかった。 『ちょっと暗いから…』 愛美のその言葉さえも忘れて、 素直に話してみたい、と思った。 でも、事件は起きた。