ゼンが集中治療室から出てきたと聞いて、一ヶ月後。ゼンはまたひょっこりと、僕の前に姿を見せた。ニコニコと笑って、僕をまた笑わせて帰っていった。
この時の僕は、これがゼンと会える最後になるなんて、夢にも思ってはいなかった。





ゼンに最後に会った日から3日後。僕はその日ばかりは、いつもより遅い時間に起床した。しかし病院の中は何だかピリピリした雰囲気で包まれていたのは、感じでとれた。そういえば、担当の看護士さんもまだ来ていない。僕は嫌な不安を覚えた。

いつもの時間と30分くらい遅れてきた看護士さんに何があったのかと聞くと、言いにくそうに答えてくれた。



「…実はね、205室の善くんが朝早くに亡くなったのよ」

聞いた瞬間、僕の頭の中は真っ白になって、ただひたすら泣くことしかできなかった。

僕の中でゼンは初めての友達で、ゼンがいたからこそ僕は今までの長い入院生活を過ごすことができていたんだ。それがいつの間にか当たり前になって、僕はゼンがいなくなってからゼンの大切さを知った。