僕は小さな頃から病弱で、入退院を繰り返している。そのためか、生きていてこの方友達なんてできたことがない。恋なんて、したこともない。
そんなこんな病院で過ごしているうちに、気付けば生まれて15年の月日が経っていた。窓から見えるのは咲いたりは散ったりする桜の木が見えるだけ。そろそろ飽きてきた。かといって友達を作ろうとも、人見知りな性格が邪魔をして病室の皆に溶け込んでいくことができなかった。だからか、いつの間にか僕は、ひとりで絵を描くことが好きになっていた。

そんなある日。
一人の男子高校生が僕は話し掛けられた。その子も病気で、入退院を繰り返しているらしい。名前はゼンと言った。ゼンは僕に毎日のように会いにきてくれて、面白い話などをたくさん聞かせてくれた。僕の描いた絵を見せたら、上手いと言ってくれたっけ。初めて僕は他人に心を開いた。


16歳になったある日、ゼンはぱたりと姿を見せなくなった。心配になって、担当の看護士さんに聞いてみると。「容態が急変して、集中治療室へ移った」そう言って病室を出ていった。最後に会った時はあんなに元気だったのに。そう心の中呟いて、僕は布団に包まった。