あたしの視線に気付いたのか、女の子はカッターナイフをくれた後に手首をブラブラと振った。


「これ?」


「……うん」


「たいした傷じゃないの。死ぬ気で切った訳じゃないから」

女の子はうつむいた。

「切るとちょっとスッキリするの。やめようとは思ってるんだけどね。気がつくとここにいるの」


人の子の感情、迷う思い――この子はそれなんだ。


「何か悩みでもあるの?」


あたしの言葉に、女の子は軽蔑したように鼻を鳴らした。


「お悩み相談? やめてよ、バカバカしい。わたしは周りの大人が嫌いなだけ。友達顔してる同じ年の子供が嫌いなだけ。そしてたぶん――」


たぶん?


「自分が一番嫌い」