「お前が帰れば元に戻る。帰ることだけ考えていろ」

チェイサーは言った。


それからふと思いついたように

「人の子の世界で、お前の毎日は楽しいのか?」

ときく。


「大体はね」


「やりたい事はできるのか?」


「上手く行かないことの方が多いかな」


「俺がきいているのは結果ではなく、過程の事だ」


「過程って?」


「例えば、走りたいと思った時に走ることができるのかと尋ねているのだ。速くではなくとも」


「ああ……大抵の事はできるよ」


「そうか」


チェイサーはニッコリと笑った。


驚いた

こんな屈託なく笑えるんだ


「あんたはやりたい事できないの?」


「俺は冬を狩らねばならぬ」


チェイサーはそう言うと、身を翻してあたしから離れた。