氷狼―コオリオオカミ―を探して

翔くんがあたしの横で立ち止まった。

あたしは、しゃがんだまま目を上げる。


「具合悪いのか?」

翔くんが心配そうに言った。


「ううん。今、犬を撫でてたの」


「犬?」


「もう行っちゃったけど」


「誰か待ってるのか?」


「待ってないよ。どうして?」


「さっきから同じ所を行ったり来たりしてる」


あたしは立ち上がった。


「いつから見てたの?」


翔くんはあたしを真っ直ぐに見た。


「家から」

文句があるなら言ってみろと言わんばかりだ。

「こんな暗くなってから一人で出かけるなんて、心配して当然だろう?」