「チェイサーの願い事に気づいてしまったのだな?」

イタチの声は優しかった。


「たぶん」

あたしはうなずいた。

「小学一年の時、あたしは重い病気になったの。激しい運動は全て禁止。骨髄移植を受けなきゃ長くは生きられないって言われてた」


家族の誰とも型は合わなかったのに、ある日突然、ドナーが見つかった。

そんな奇跡的な事、そうそう起きるはずがない。


「あたしの病気が治るように――それがチェイサーの願い事だったんでしょ?」


「結果的には」


『結果的には』って何だろう?


「本当はなかった命なら、あの人に返してあげたかったの。あたしの十年は幸せだったから」