氷狼の息がかかる。

寒い

チェイサーに冷気を吹き込んでもらったけれど、それでは間に合わなかったみたい。

気が遠くなりそう。

薄れる意識に<冬>が語りかけてくる。


『我が前に膝を折り頭(こうべ)を垂れよ』


嫌だ

それでは死んでしまう。


あたしは力を振り絞り、身をよじらせた。

何かが体にあたる。

はっとして手にした物は、カッターナイフだ。

『迷いの森』で女の子がくれたカッターナイフ。


チェイサーと狐達が氷狼にうちかかり、氷狼をあたしから引き離そうとしていた。

あたしはカッターナイフを手にした。