「せ……い…や」

呼吸を整えながら

彼女が俺を呼ぶ。


「………」

俺は美沙を黙って見下ろしながら

………改めて、思う。


美沙をこのまま手離したら

俺は楽になれるのだろうか。


何もかもを忘れて

誰かをまた、愛せるのか…。



……―――無理だ…。


こんなに、気持ちを乱されて

何年間もなりふり構わず

思い続ける事など

今後、一生ないだろう…。