瑛太とあたしの出会いは平凡なものだ。
高一の時、同じクラスで席が前後だということから話すようになった。


そしてお互い高校に知り合いがいなかったため、なんとなく一緒に過ごすようになった。ただそれだけのこと。


少女漫画やドラマの世界みたいに、劇的な出会いがあったとか、運命を感じたとかそんなものじゃない。


どこにでもありそうな始まりだった。


猫みたいに自由気ままな瑛太は、つかみどころがなくって、ちょっと変わったやつだったけど、一緒にいると何故か落ち着けて、瑛太の側にいるのが好きだった。


それを、恋と呼ぶにはあまりに頼りなかったけれど。


あたしが密かに瑛太に好意を感じていたのを、瑛太はきっと知らないと思う。


あたしだって、自分のこの気持ちに気付いたのは、つい最近のことだ。


今だって、よくわからない。
【瑛太】が好きなのか。
【瑛太といる】ことが好きなのか。


この【好き】は他のもの―例えば音楽とか本とか―そういうものに感じる好きとは違ったものなのか。


友だちとして【好き】なのか。
恋愛として【好き】なのか。


そもそもこの二つはどう違うのか。


恥ずかしながら、そういうことに疎いあたしには、この感情を何と呼べば良いのか全くわからなかった。


ただ、これからも今みたいに一緒にいたいと思う。


卒業、という節目に突き当たって、それが難しいと知った今、ようやく自分のこの感情に気付いたのだ。