「ほら、そろそろ泣き止めよ。見てみ、めっちゃ空綺麗じゃん」


瑛太が自分の裾であたしの涙を拭いた。


「痛いって」


だけど、本当に夕日はあたたかくて綺麗だった。


「きっと明日は良い天気だな」


学校で、二人で夕日を見るのはこれで最後。卒業してしまったら、こうやって空に近い屋上から見ることはないだろう。


それでも、これからも瑛太の隣で色んな景色を見ることができる。


一緒にいれる。


太陽が家に帰るのを見送ってから、あたしたちも自分の家に帰ることにした。


道中、あたしの右手は瑛太の左手に繋がれていて、恥ずかしいような嬉しいようなくすぐったい気持ちになった。


幸せな時間はあっという間に過ぎて、もうあたしの家に到着してしまった。


いつものようにじゃあね、と別れる。


けれどひとつ違うのは、今日はやたらと瑛太が振り返りながら帰って行ったってところ。


あたしも離れ難くて、ずっと瑛太の背中を見送っていた。


繋がれていた手には、ほのかに温もりが残っていた。