さよなら、ありがと。

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「ねぇ、本当に大丈夫?」

「だぁいじょうぶだって」


心配するあたしを見向きもしないで、瑛太はさっきから鍵のかかったドアノブと格闘している。


薄暗く、誰もいない階段にはあたしたちの声とガチャガチャという金属音だけが響いてて。


それが余計にあたしを不安にさせた。


何が『スリルを味わいませんか?』よ。これじゃただのサボりとは訳が違うじゃない。


「バレたりしないかなぁ?」

「ちょ、お前黙れ。あと少しなんだから」


瑛太にたしなめられたあたしは、ただただ誰かが来るんじゃないかと、見張り役に徹するしかなかった。


ガチッと一つ大きな音が聞こえたかと思うと、よし、と瑛太が溜め息をついた。


あたしも思わず息を飲む。さっきより一段と心臓がバクバクいっている。


一瞬二人の目が合って、あたしは思いきり頷いた。


大きく深呼吸をした後、行くぞ、の掛け声と共に開かれた扉の向こうは、果てしなく広がった空だった。